上の画像のスイスチャンプなんて33の機能を持つのに通称は10徳ナイフ。的を得ている通称だ。いい感じで端折ってて。
《10徳ナイフ》とは上手く言ったものだ
さて、自社製品の場合、機能に対する思い入れが大きくなりすぎることがよくある。(経験者談)
その製品が持ち合わせる全ての機能に思い入れがあり、すべての機能をみんなに知ってもらいたく、これだけ機能が付いているんだから、間違いなく売れるし喜ばれるはずだ、と。
「ふーーー」こんなこと思うの、売る側だけだから。買うほうは知らなくていいこともあるんだから。
でも気付けないのだ。
自分の過去事例を持ち出すと《高機能ハードディスク》のネット通販での拡販失敗がいい例なので共有。
この《高機能ハードディスク》は
- Wi-Fi対応、無線でデータのやりとりができる
- iPhone/androidからアプリを経由して接続できる
- ハードディスクのドライブを前面にある窓から挿入できる(フロントローディング)
- 接続速度は高速USB3.0搭載(発売当時)
- USトップシェアブランドのハードディスク搭載
- 使用時のみ冷却FANが回転するから省エネ(スマートFANコントロール)
- 積み重ねて使えるデザイン(スタッカブル設計)
- 日本製(Made in Japan)
・・と8つの特徴を併せ持っていた。
しかもこの8つ、全てがセールスポイントになる潜在能力があることにも経験上気付いていた。
さあ、どうやって失敗したか?そしてどうやって拡販に結び付けたか?
失敗例:自慢ポイントが多いとウザい
はい、前述のとおり《8つの機能》全てに対し思い入れがあり、市場が反応するワードであることも知っていたので、当然ながら上の1~8まで全ての要素を平均的に入れ込んだ製品販売コンテンツを作った。
だってこの機能を全て知ってほしかったから、だって1番目の機能にグッと来ない人でも3番目の機能にはグッとくるかもしれないから、だって、だって。。
どんなコンテンツになるかは想像できますよね?
一言で表現すると「この製品を使うとどんないいことがあるのか?全然わからない」
あれも、これも、それも、と矢継ぎ早に話されると理解できなくなる会話と一緒で、まったく伝わらないコンテンツになった。
結果、まったく売れない製品になった。満を持してリリースしたこの愛すべき製品が!
メーカーにとってモノが売れないことほど怖いコトはない。
企画に工数をさき、開発費用を投資し、在庫資産を抱えているからだ。
販売サイドは脂汗をかきながら考える。売れない理由を考える。なにか原因があるはずだ。
成功例:特徴が多いモノでも、あえて伝えるコトをしぼりこむ
社内でもすったもんだがありまして(このあたりのエピソードは書けません、いつかの機会にお話します)、ここでようやく「伝えるコトをしぼりこむ」作業にとりかかった。
1~8の機能のうち、今一番届けたいコトはなにか?を探った結果、
- iPhone/androidからアプリを経由して接続できる
に照準をあて、さらに言葉をわかりやすく編集し、当時どこにもなかった
- iPhone専用のハードディスク
として再発売した。
当時のiPhoneは最大メモリ容量でも64GB。反面、カメラは高機能化しており写真データのサイズは大きくなっており内臓メモリが圧迫されるユーザーが多数いた。
今でこそLightning端子のついたメモリースティックがあるが、それも存在していなかった。
そんな状況のなかに
- iPhone専用のハードディスク
とうたった製品がでたものだから、売上結果は想像のとおりだ。
生産者側の「思い入れ」があってこその製品開発だと思うし、技術革新が進むし、世の中を便利に暮らしやすくすることにつながる。
しかしお客様に伝えるためには、きちんと情報を整理し、「誰にどんないいことができるのか、それはなんでできるのか」を端的につたえることの大切さが今回の失敗例で経験できた。
33の機能を持つ「10徳ナイフ」のようにわかりやすく伝えるコトを肝に銘じたい。